理学療法士の仕事とは?理学療法士になるための方法や活躍の場を紹介

理学療法士の仕事とは?理学療法士になるための方法や活躍の場を紹介

日本は少子高齢化が進んでいます。内閣府公表の「令和元年版高齢社会白書」によると、2018年10月1日現在、65歳以上の人口は総人口の28.1%(3,558万人)です。今後も高齢化の傾向は続き、2040年には総人口の35.3%(3,921万人)が65歳以上人口になると予測されています(出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」)。高齢化社会においては、医療の重要性が高まっていますが、同時に、リハビリテーションの重要性も高まりをみせています。今回は、リハビリテーションの専門職である理学療法士について、仕事内容、柔道整復師や作業療法士との違い、理学療法士をめざす方法についてみていきましょう。

理学療法士とは?

理学療法士とは、高齢者やケガ、病気をした人などに対し、立つ、起きる、歩く、寝返るといった日常の基本的な身体の動作をスムーズに行えるように、リハビリテーションを行う専門家です。具体的な仕事内容は次のとおりです。

理学療法士の仕事内容

おもに運動機能が低下した人を対象に、運動機能の維持・改善を目的として、運動や温熱、電気、水、光線などの物理的手段を用いた治療を行います。

理学療法士が対象とするのは、中枢神経疾患、整形外科疾患、呼吸器疾患、心疾患、内科的疾患、体力低下などです。また、リハビリテーション以外にも、運動機能低下が予想される高齢者のケア、メタボリックシンドロームの予防対策も仕事内容に含まれます。とくに少子高齢化が進む日本においては、高齢者に対するさまざまなケアが重要となっているため、理学療法士が活躍できる場は広がりつつあります。

柔道整復師や作業療法士との違い

理学療法士と近い職業として、柔道整復師と作業療法士があります。どれも国家資格を要する仕事ですが、細かく見ていくとそれぞれには大きな違いがあります。

理学療法士と柔道整復師の違い

柔道整復師は骨折、脱臼、捻挫(ねんざ)、挫傷(ざしょう)、打撲といったケガに対して、整復法、固定法、後療法(こうりょうほう)といった柔道整復術を用いた治療を行います。一方、理学療法士は治療ではなく、運動療法や物理療法などで機能回復をめざすリハビリテーションを行います。

また、柔道整復師はみずからの意思で判断し、患者の治療を行えます。しかし理学療法士は、医師の指示がなければ患者の身体に触れることができず、リハビリテーションを行うこともできません。そのため、医療分野においては、柔道整復師のほうが対応は広範囲におよぶといえます。

さらに、柔道整復師は、医師、歯科医師、助産師、あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師と並んで開業が認められている数少ない資格です。

理学療法士の場合、フリーランスとして個人事業主となることを開業と定義すれば、個人で開業できます。しかしその場合でも、医師の指導を受けられる環境でなければ、理学療法は行えません。

理学療法士が個人で施術施設を開業する場合は、整体やリラクゼーションなど医療以外の分野に限られるのです。したがって、自分の意思で施術をしたい、または将来開業を考えている場合は、柔道整復師のほうが選択肢の幅が広いといえるでしょう。

柔道整復師について詳しく知りたい方は「【徹底解説】柔道整復師とは?仕事内容、必要な資格、年収や適性について」をご覧ください。

理学療法士と作業療法士の違い

作業療法士は、食事、洗顔、入浴など日常生活を快適に送るためのリハビリテーションを行うのが仕事です。また、精神分野のリハビリテーションを行うこともあります。

理学療法士、作業療法士のどちらも、身体機能が低下した人に対して施術を行いますが、作業療法士の場合は、精神科の疾患も対象のひとつです。また、リハビリテーションの目的にも違いがあります。理学療法士は、基本的な運動機能の回復・維持、リハビリテーションの必要性が予測される人のケアなどを行います。一方、作業療法士は、手や指などの細かい動作に対するリハビリテーションを行い、社会適応能力の回復を促すサポートをするのです。

理学療法士になるには?

では、理学療法士になるにはどうすればよいのでしょうか。理学療法士になるまでの道のりを説明します。

理学療法士になるには、高校を卒業後、大学や短期大学(3年制)、専門学校など文部科学大臣指定の学校または厚生労働大臣指定の理学療法士養成施設で3年以上学び、国家試験の受験資格を得なくてはなりません。

試験は毎年2月に筆記試験と実技試験が別々の日に実施されます。試験内容は次のとおりです。

  • 筆記試験の内容(一般問題、実地問題)

解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、リハビリテーション医学など。

  • 口述試験および実技試験の内容

口述試験及び実技試験は、重度視力障害者に対して行われ、筆記試験の実地問題に代えて、運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要(人間発達学を含む)、理学療法について実施。

厚生労働省公開の資料「理学療法士・作業療法士の需給推計を踏まえた今後の方向性について」によると、過去10年(2009年~2018年)の平均合格率は、大学卒で90.8%、養成施設卒で80.5%です。高い合格率からみても、学校や養成施設でしっかりと勉強をすれば、けっして難しい資格ではないといえるでしょう。

理学療法士に求められる適性は、適切なリハビリテーション方法を提案できるだけの、知識と医療技術の習得を常に求める向上心があることでしょう。また、同じ症状の患者に対し、機械的に同じ対応をするのではなく、一人ひとりに最適な対応をするための判断力、応用力、人に対する思いやりも重要です。

さらに、患者の年齢層は若者から高齢者まで幅広いため、それぞれに適したコミュニケーション能力を発揮する必要もあるでしょう。もちろん、患者の身体を支え、動かすための体力づくりも欠かせません。

理学療法士が活躍できる場とは?

理学療法士が活躍できる場としては、整形外科や脳神経外科といった医療機関、障がい者施設、児童福祉施設、高齢者施設などが挙げられます。通院が困難な高齢者や患者を対象にサービスを提供する訪問リハビリテーション事業所でも、多くの理学療法士が活躍しています。ほかにも、運動、動作の専門知識を生かして、福祉器具を取り扱う企業、障がいや病気のリハビリテーションを行うためのバリアフリー住宅への改修にかかわる現場などで活躍が可能です。

または、前述したように、リハビリテーションを目的としない施設を独立開業して活躍の場を広げることもできます。具体的には、整体やリラクゼーションなどで、腰痛、肩こり、疲労回復、姿勢改善といった施術を行います。

そのほか、経営者としてデイサービス、訪問看護ステーションを経営する、店舗を持たずヨガやピラティスのインストラクター資格を取り、産前産後ケアやマタニティヨガの講師をするといった道も考えられます。理学療法士の資格があれば、運動学、生理学の側面からアドバイスを行え、競合との差別化ができることが大きなメリットといえるでしょう。

以上のように、理学療法士は、医療の分野では医師の指示がなくては仕事ができませんが、そのほかの分野で理学療法士の資格や経験を生かせる場面がたくさんあります。

積極的な学びと経験が頼りにされる理学療法士への道

理学療法士は、高齢化社会が進む日本においては、高齢者が健康的に暮らしていけるようにサポートをする専門家の一人として期待される職業のひとつです。しかし、理学療法士の資格を取得するだけで信頼される専門家になれるというわけではありません。

幅広い知識を身につけ、経験を積むことが、理学療法士として成功する道だといえるでしょう。なお、患者の治療という方面での活動範囲を広げていきたいと考えている場合は、理学療法士の資格のほかに、柔道整復師の資格取得をめざすのもおすすめです。

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