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活躍の機会が高まるメディカルトレーナーとは?注目されている背景や求められるスキルを解説

どの分野でも、自分ひとりで調べて学んで習得するよりも、専門知識と技術を持っている専門家に指導を受けながら学ぶのが効率的であり、失敗も少ないと考えられます。スポーツ選手として技術を向上させたり身体を鍛えたりするうえでも、また、健康のために身体を動かすことを心がけたいと考えている人にとっても、トレーナーの指導を受けることは有用でしょう。そうしたスポーツ・健康維持の分野で活躍するトレーナーにはさまざまな種類があります。今回はそのなかのひとつ、メディカルトレーナーについてその仕事内容や将来性、またメディカルトレーナーになるための方法を紹介します。

メディカルトレーナーとは

まずは、メディカルトレーナーとはどのような役割を担うのか、また、なぜ今、注目されているのか、その背景から見てみましょう。

医療活動の分業の必要性

私たちが日常、病気やけがのために医療施設で受診する場合を想像してみてください。

症状を確認して、どのように治療するのかを決定し、具体的な方法を示すのは医師の役割です。しかし、医師の指示に従って、患部や身体を検査したり、治療に必要な薬剤の調合をしたりするのは、それぞれの専門技術者が担います。さらに、病中や病後のリハビリテーションのようなケアも、また別の専門家が担当します。このように医療の現場は、ひとつの病気やけがなどに対して治療を行う場合でも、チームによる対応がなされます。そして、それぞれの専門知識を生かした分担・分業により成り立っているのです。

なかでも病中病後や、けがの術後である患者さんに対して行う、基本的な身体機能の回復や、精神的なケアなどにはそれぞれの患者さんの状態に向き合いながら時間をかけて、丁寧なリハビリテーションを続けることになります。特に患者さんそれぞれのリハビリ・メニューの立案や、回復状況のチェックと必要に応じたプランの見直しは欠かせません。また精神的なケアや長引く可能性のあるリハビリテーションを継続するために患者さんの気持ちに寄り添い、相談に乗ることも大切です。こうした個別の細かな対応には、それぞれに専門の技術者・スタッフの存在が必要です。

さらに高齢化が進む日本においては、けがや病気のみならず、介護を必要とする高齢者への自立支援や、健康な状態を長く保つための介護予防への指導等の必要性がますます高まってきています。

このように、それぞれの専門知識を持った人材による、医療や介護福祉の分野においての分業の必要性は高まってきていると言えます。

スポーツにおけるけがからの回復、防止への期待

速さや力を競うスポーツの世界では、競技中はもとより、練習中でも、けがや故障のリスクが常にあります。勝つための技術向上をサポートするスポーツトレーナーの存在が成績を左右することになります。しかし高い成績を上げるには、技術を磨き、力を高めることをサポートするスポーツトレーナーのみならず、身体のベストコンディションを維持し、けがや故障等による治療中はもちろん、けがや故障の防止や、能力を遺憾なく発揮できるような身体をつくることをサポートする、専門的なトレーナーが必要とされています。それがメディカルトレーナーです。

メディカルトレーナーの活躍の場とは

それではメディカルトレーナーの活躍の場を見てみましょう。

活躍の場

アスリートを対象とした勝つための身体コンディションの維持のみならず、高齢者や病気・けがからの回復を目指している人を対象として、身体のベストコンディションを維持したり、身体機能の無理のない回復を促したりするためのサポートをするメディカルトレーナーは、次のような広い範囲で活躍しています。

  • スポーツチーム:プロチーム、団体、学生のスポーツチーム、アマチュアのチーム等。働き方はさまざまですが、主にスポーツチームを所有している企業・団体との個別契約あるいは社員として勤務しながら対応することになります。
  • スポーツ選手個人への対応等:対応する選手との個人契約で仕事をすることになります。
  • スポーツジムやクラブ:社員として勤務するケースや個別契約で対応するケースが考えられます。
  • 医療関係・病院等:リハビリ施設への勤務や個別契約によって、患者さんに対応します。
  • 介護福祉施設/団体:高齢者等の日常生活での自立のための支援、介護予防の指導者としての施設職員として勤務するケースや、個別契約をして対応するケースがあります。

メディカルトレーナーの多くは、これらの団体や施設に正社員として就職するほか、契約社員として勤務したり、業務委託として個別の契約をしたりして働くなど、勤務形態はさまざまです。個別契約の場合は、常勤とはならないことも多く、複数の団体や施設と契約し、それぞれの場でメディカルトレーナーという専門家として業務に当たることになります。

将来性

科学的な根拠と、常に新しいトレーニング方法が採用されるスポーツ界では、医学的観点でのケアや予防が重視されています。また、試合や練習以外の時間においても、選手たちの体調管理や身体機能回復のためのトレーニングは大切です。こうしたことからメディカルトレーナーの重要性は増しています。さらに一般のスポーツ愛好家でも故障に苦しんでいたり、スポーツ障害防止への意識が高まったりしていたりするため、アマチュア団体やジム等でもメディカルトレーナーの知識やスキル、指導力を求めています。また、健康志向の高まりのなか、ダイエットのための運動や美容施術のほかに、メディカル的な視点から身体コンディションの調整を重視し、無理なく健康的なダイエットによる美しさを目指す傾向が強まっています。このようにメディカルトレーナーの活用の場所や機会は、今後もさらに増えると予想されます。

メディカルトレーナーになるには

それでは、メディカルトレーナーになりたいと考えたとき、求められるスキルやあれば有利になる資格についてみていきましょう。

メディカルトレーナーに求められるスキル

スポーツトレーナーはアスリートに対する適切なトレーニングの提案をするために、スポーツや身体についての高度な知識と観察力、そして相手に適切なトレーニング方法やケア方法を理解してもらえるように伝えるコミュニケーション力が求められます。ごくわずかな不調が競技の結果を左右することになるのが、スポーツ競技の世界です。

スポーツトレーナーのなかでもメディカルトレーナーは、地味な存在でありながら、アスリートの身体を整え、いつでも同じように最高のパフォーマンスができるよう維持しながら、ときにはけがや病気からの回復をサポートしなければなりません。その責任は重大です。もちろん、アスリートへの対応に限らず、それ以外の人を対象とするときにも必要なスキルだと言えます。このように身体の内面からアスリートや高齢者、健康を維持したいと考えている人々を支えるメディカルトレーナーには、先に伝えたスポーツトレーナー全般に必要なスキルに加え、次の力が求められると考えられます。

  • 客観的に身体の状態を把握し、それに対して原因を分析でき、改善への道筋を判断してトレーニングやケアのメニューをプランニングできるスキル。
  • 相手の話を聞き、相手の立場になって、状態を把握するためのコミュニケーションができるスキル。
  • 基本的な医学、スポーツ医学の知識、運動理論のようなスポーツ全体の知識、けが・病気に対するケアの知識と技術力。
  • 対象とする人の身体を常に良好に保つための食事、睡眠管理ができるスキル。例えば栄養学、生理学といった知識が必要となります。
  • けがからの復帰や闘病時の精神的な支えとなれるスキル。例えば心理学の知識やカウンセリング力なども必要となります。

ただし、医療類似行為を行うには医療系の国家資格所有が義務づけられていますので、メディカルトレーナーとして活躍するためには柔道整復師のような資格や技術力が求められるケースも少なくありません。

メディカルトレーナーに求められるスキルは多様です。貪欲に学び、研究する姿勢や、それを実行できる資質なども問われるわけです。言い換えれば、経験を積むことと、さらに新しい知識やノウハウの蓄積、分析力の向上など、学び続ける姿勢が大切だと言えるでしょう。

メディカルトレーナーになるための資格

国家資格が必要な職業ではありません。しかし上記でも説明したように、メディカルトレーナーが担う役割から考えると、医学、生理学、心理学、栄養学、コミュニケーション力、分析力、プログラム作成力などさまざまなスキルが求められる職業です。こうしたスキルと有している証しとして認められるような資格を取得しておくことは、メディカルトレーナーとして仕事をしていきたいと考えたとき、大いに価値のあることです。

例えば、理学療法士、柔道整復師鍼灸師(はり師・きゅう師)などの国家資格も積極的に取得を目指しましょう。

終わりのない知識の習得と経験を蓄積していくのが醍醐味

メディカルトレーナーとしての資格があるわけではありません。その分、幅広い知識と経験が求められることになるので、終わりなき学習、研究、実践を長く楽しむことができる仕事でもあるのです。選手やアスリートのけがからの回復の支援に加え、高齢者や病気・けがからの回復を目指す一般の人へのサポートに、専門知識と技術、経験から得られる対応力をフルに活用するメディカルトレーナーは、広く医療現場や介護・福祉現場を支えることにもつながる、やりがいのある仕事なのです。