スポーツトレーナーについて知る
最終更新日: 2026.07.29 公開日: 2021.01.14「スポーツトレーナーになりたいけれど、柔道整復師の資格は取るべきなのだろうか」----スポーツの仕事を目指す高校生やご家族にとって、資格と職業の関係は分かりにくいテーマです。この記事では、柔道整復師とスポーツトレーナーの違いを整理しながら、国家資格がスポーツ現場でどう活きるのか、資格だけでは補いにくいスキル、トレーナーの目指し方までを解説します。両者の関係を正しく理解し、納得して進路を選べるようサポートします。
まずは「結局どうなのか」を先にお伝えします。以下がこの記事の結論です。
| 疑問 | 結論 |
|---|---|
| 柔道整復師はスポーツトレーナーになれる? | 活動できる。スポーツトレーナーは国家資格名ではなく、柔道整復師資格をスポーツ現場で活かすことが可能 |
| 両者は同じ職業? | 違う。スポーツトレーナーは役割の総称、柔道整復師は国家資格 |
| 資格の強みは? | 骨折・脱臼・捻挫などスポーツ外傷への知識と、法令の範囲での施術 |
| 資格だけで十分? | 不十分。トレーニング指導・コンディショニングは別途学ぶ必要がある |
| 目指し方は? | 養成課程→国家試験合格→トレーナー教育+現場経験の積み上げ |
結論から言うと、柔道整復師の資格を持つ人が、スポーツトレーナーとして活動することは可能です。ただし、実施できる施術や行為は、柔道整復師法をはじめとする法令上の業務範囲に従う必要があります。
そもそもスポーツトレーナーとは、選手や運動をする人の体づくり、コンディショニング、ケガの予防や現場での応急対応などを支える仕事・役割の総称です。法律で定められた資格の名前ではなく、スポーツトレーナーを名乗るために必須の国家資格はありません。そのため、柔道整復師の国家資格をスポーツ現場で活かすという働き方を選べます。
なお、資格の取得とスポーツチームへの就職・契約は別の話であり、資格以外にどんな力が求められるかは、この記事の後半で解説します。
両者の最も大きな違いは「位置づけ」です。スポーツトレーナーは仕事・役割の総称、柔道整復師は国家試験に合格して得る国家資格です。まずは表で整理します。
| 比較項目 | スポーツトレーナー | 柔道整復師 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 仕事・役割の総称 | 国家資格を持つ専門職 |
| 必須資格 | 必須の国家資格はない | 柔道整復師国家試験への合格が必要 |
| 主な役割 | 運動指導、コンディショニング、ケガの予防、現場での応急対応など | 法令上の範囲で骨折・脱臼・打撲・捻挫などへの施術を行う |
| 主な対象 | アスリート、学生、一般の運動者など | スポーツ選手を含む幅広い人 |
| 活躍の場 | チーム、学校、ジム、トレーナー派遣会社など | 接骨院・整骨院、医療・介護・スポーツ関連の現場など |
| 独立開業 | 業務内容や保有資格による | 接骨院・整骨院の開業を目指せる |
柔道整復師とは、柔道整復師法にもとづき、骨折・脱臼・打撲・捻挫などの外傷に対して、手術や投薬によらない方法(非観血的療法)で整復・固定・後療などの施術を行う国家資格者です(厚生労働省 職業情報提供サイト「柔道整復師」)。仕事の詳細は柔道整復師の仕事内容や必要な資格で解説しています。
重要なのは、両者は「どちらかを選ぶ」関係ではないことです。「柔道整復師という国家資格を持って、スポーツトレーナーとして活動する」という組み合わせが可能です。スポーツトレーナーの仕事の全体像はスポーツトレーナーの詳しい仕事内容もあわせてご覧ください。
柔道整復師の資格は、スポーツトレーナーとして活動するうえで強みの一つになります。ここでは4つのメリットを紹介します。
柔道整復師の養成課程では、解剖学や生理学をはじめ、骨・関節・筋肉などの運動器に関する知識、骨折・脱臼・打撲・捻挫といった外傷に関する知識を体系的に学びます。こうした知識は、練習や試合でケガが起きた際に身体の状態を確認し、医療機関への受診を促すべき状況に気づいて、適切な専門職へつなぐ場面で役立ちます。また、柔道整復師は法令で認められた範囲で施術を行えます。ただし、柔道整復師法第17条により、骨折または脱臼の患部への施術は、応急手当をする場合を除き、医師の同意が必要と定められています(e-Gov法令検索「柔道整復師法」)。柔道整復師が医師のように「診断」を行えるわけではない点も理解しておきましょう。なお、柔道整復師資格が認めるのはこうした施術であり、トレーナーとして行う運動指導やコンディショニングは、資格とは別に身につける領域です。
柔道整復師として学ぶ知識は、ケガをした後の対応だけでなく、体の状態を把握してケガを予防したり、競技復帰までの過程をサポートしたりする場面でも活きる可能性があります。スポーツ外傷に関する知識を持つトレーナーとして選手を支えやすくなるのは魅力の一つです。一方で、選手のケガへの対応は一人で完結するものではありません。医師の診断が必要な場面や、理学療法士などほかの専門職と連携する場面も多くあり、周囲と協力しながら選手を支える姿勢が欠かせません。
柔道整復師の資格があれば、進路をスポーツ分野だけに限定する必要がありません。接骨院・整骨院をはじめ、医療や介護に関わる現場など、複数の働き方を検討できます。スポーツトレーナーとしての活動と接骨院での勤務を組み合わせる働き方も選択肢になります。具体的な働き方は、この記事の後半で紹介します。
柔道整復師には、接骨院・整骨院の開業を目指せるという特徴があります。将来、自分の施術所を拠点にしながら、地域のスポーツチームをサポートするといった働き方も描けます。ただし、資格を取得しただけで経営がうまくいくわけではなく、実務経験に加えて、経営や集客、保険制度、法令遵守などの知識も必要になります。
柔道整復師資格は、スポーツ現場で活動するうえで強みの一つになりますが、スポーツトレーナーに必要な力のすべてをカバーするわけではありません。ここを理解しておくことが、進路選びで失敗しないポイントです。柔道整復師の学びに加えて、次のような知識や経験が求められます。
柔道整復師の養成課程は、国家試験に対応した医学的な学びが中心です。トレーニング指導やコンディショニングは、別途学ぶ必要があります。柔道整復師以外にもトレーナー関連の民間資格は複数あるため、スポーツトレーナーに役立つ資格を参考に、自分に必要な学びを整理してみてください。だからこそ、柔道整復師の国家資格とトレーナー教育の両方を並行して学べる環境を選ぶことに意義があります。
柔道整復師の資格を活かしてスポーツトレーナーを目指す流れを、5つのステップで解説します。
まず、文部科学大臣が指定した学校または都道府県知事が指定した養成施設で、3年以上かけて必要な課程を修了し、国家試験の受験資格を得ます(厚生労働省「柔道整復師国家試験の施行」)。解剖学・生理学などの基礎医学から、柔道整復の実技までを学びます。
養成課程を修了しただけでは柔道整復師にはなれません。国家試験に合格し、免許を取得する必要があります(試験の実施は公益財団法人 柔道整復研修試験財団)。学校での学びは合格を保証するものではないため、在学中から計画的に試験対策を進めることが大切です。
トレーニングやコンディショニング、スポーツ科学などの知識は、トレーナー養成のコースや講座などを活用して積み上げていきましょう。資格の名前を集めることよりも、現場で使える力を身につけることが目的です。
トレーナーの仕事は現場経験がものをいいます。学校の部活動のサポート、地域のスポーツチーム、トレーナー派遣、学校で用意された実習先など、学生のうちから現場に立てる機会を積極的に活用しましょう。
チーム専属のトレーナー、接骨院に勤務しながらトレーナー活動を行う兼業、学校や地域スポーツのサポートなど、働き方は一つではありません。自分がどんな選手を、どんな形で支えたいのかを考えて進路を選びましょう。
「アスレティックトレーナー」という言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。柔道整復師が国家資格であるのに対し、アスレティックトレーナーは柔道整復師とは別の資格・専門領域です。代表的な資格の一つに、公益財団法人日本スポーツ協会が認定する公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)があります。
JSPO公認アスレティックトレーナーは、スポーツドクターやコーチと連携し、外傷・障害予防、コンディショニングやリコンディショニング、安全・健康管理、そして医療資格者へ引き継ぐまでの救急対応などを担う役割です。役割の詳細はアスレティックトレーナーの仕事内容や目指し方を、資格の種類や取得方法はアスレティックトレーナー資格の種類や取得方法をご覧ください。
柔道整復師とアスレティックトレーナーは、どちらが上という関係ではありません。両方の資格や知識を組み合わせて、対応できる役割の幅を広げるという選択肢もあります。
柔道整復師資格をスポーツ現場で活かす働き方には、次のようなものがあります。
ただし、勤務先によって任される業務の内容や、求められる資格・スキルは異なります。収入については、「柔道整復師資格を持つスポーツトレーナー」という職種だけを対象にした統一的な給与体系があるわけではなく、勤務先、雇用形態、担当業務、経験、契約内容などによって異なります。収入の考え方や求められる人材像はスポーツトレーナーの収入や求められる人材で詳しく解説しています。
柔道整復師の国家資格とトレーナーとしての学びを両立したい場合、学校選びでは次の5つのポイントを確認しましょう。
国家試験対策の実績だけで選ぶと、トレーナーとしての実践経験を積む機会が少ないまま卒業してしまうことがあります。「国家試験対策」と「スポーツ現場実習」の両方がそろっているかが比較の軸になります。就職先の考え方も含めた比較のポイントはスポーツトレーナーの就職先と学校の選び方も参考にしてください。
東京・浅草橋の日本健康医療専門学校(ニッケン)は、柔道整復師の国家資格とトレーナー教育を組み合わせて学べる専門学校です。
日本健康医療専門学校の柔道整復学科は3年制で、午前部と午後部があります。基礎医学から臨床実技、リハビリテーション医学まで、国家試験の試験科目を正規のカリキュラムとして学べる体制です。学校の公表によると、2025年度の柔道整復師国家試験では、本校受験者の合格率97.2%(全国平均71.5%)という実績があります。
※第34回柔道整復師国家試験(令和7年度実施、2026年3月発表)の結果。本校の合格率は、本校の当該国家試験受験者に対する合格者の割合です。
さらに、鍼灸学科・柔道整復学科午前部の学生が併修できる2年制の日本健康医療専門学校のスポーツトレーナー養成コース(定員20名、授業時間14時~17時10分)を設置しています。このコースでは、国家資格の勉強と並行して、NASM(全米スポーツ医学アカデミー)関連資格の取得を目指すトレーナー教育を受けられます。公式ページでは、スポーツ現場実習の掲載例として、大学のラグビー部やバスケットボール部、陸上競技部などでの活動が紹介されています。実習の様子や在校生の雰囲気を直接確かめたい人は、オープンキャンパスへの参加もおすすめです。
最後に、高校生やご家族からよく寄せられる質問にお答えします。進路選びの不安解消にお役立てください。
スポーツトレーナーを「名乗ること」自体は、柔道整復師の資格の有無にかかわらず可能です。トレーナーに必須の国家資格はないからです。ただし、専門家として仕事を得るためには、資格に加えて、トレーニング指導やコンディショニングの知識、競技への理解、現場での経験が求められます。柔道整復師の資格はケガへの対応力という強みになりますが、それだけで十分とはいえないため、トレーナーとしての学びもあわせて積むことが大切です。
スポーツトレーナーは国家資格名ではないため、活動するために一律で必要となる国家資格はありません。ただし、骨折・脱臼・打撲・捻挫などに対して柔道整復の施術を業として行うには、柔道整復師免許が必要です。担当できる施術や行為は保有資格によって異なるため、自分が担いたい役割から必要な学びを考えることが重要です。
どちらが上ということはなく、目指す役割によって選択が変わります。法令上の範囲で外傷への施術を行いたい人は、国家資格である柔道整復師が候補になります。外傷・障害予防、安全・健康管理、医療資格者へ引き継ぐまでの救急対応、リコンディショニングなどを学びたい人は、JSPO公認アスレティックトレーナーなどの資格が候補です。両方の知識を組み合わせる道もあるため、将来像から逆算して考えましょう。
一律には示せません。年収は、勤務先(チーム、接骨院、ジムなど)、雇用形態(正社員、契約、個人事業主など)、経験年数、保有資格、契約内容によって大きく異なるためです。たとえば、接骨院に勤務しながらトレーナー活動を行う人と、チームと専属契約を結ぶ人では収入の仕組み自体が違います。金額よりも、まずは自分が目指す働き方を明確にすることが大切です。
プロスポーツチームで活動する可能性はありますが、柔道整復師資格だけで採用や契約が決まるわけではありません。担当競技への理解、トレーナーとしての知識・技術、現場経験、他職種と連携する力なども求められます。学生のうちから現場実習などで経験を積み、実力を示せるように準備しておきましょう。
柔道整復師はスポーツトレーナーとして活動できます。ただし、スポーツトレーナーは役割の総称、柔道整復師は国家資格であり、同じ意味ではありません。柔道整復師の資格はスポーツ外傷への対応で強みの一つになりますが(骨折・脱臼への施術は応急手当を除き医師の同意が必要)、トレーニング指導やコンディショニングは別途学ぶ必要があります。国家資格・トレーナー教育・現場経験を組み合わせることが重要です。学校選びでは国家試験対策に加えてスポーツ現場実習の有無も確認し、まずはオープンキャンパスで学びの環境を自分の目で確かめながら、前向きに進路を選んでいきましょう。